10月21日(日) ジュドさんとの共演半年ぶりのMAILになります。皆さま、お変わりありませんか? 皆さまにお祝いしていただいた「BIRTHDAY PARTY」のご報告もしないまま、目の前の本番と、8月に開設しました「井脇 幸江Ballet Studio」の準備と運営。さらには私事ですが結婚という慌しさの中でも、この数ヶ月間はとても充実した日々でした。 おかげ様で、スタジオの方も順調に動き出しています。毎回のように、新しい方も訪れていただいていますし、一方では常連の方同士が和やかな雰囲気をかもし出して下さるようになってきました。 結婚に関しましては・・・実は、突然のことでした。 いつまでも、優しい笑顔を見せ合える夫婦で在りたいです。 さて、少し時間が経ちましたが、9月に共演させていただいたジュドさんとの舞台についてお話したいと思います。 『牧神の午後』。ドビュッシー作曲のゆるやかで美しいその音楽は、聴いているだけで情景が浮かぶようです。それに対して、動きは平面的で常に真横を向いたポーズの連続。演じる者としてはニンフの心情の変化をどのように表現したらよいのか、とても難しく感じていました。初演した時は、指導されたことを守るだけで終わってしまったようにも感じ、腑に落ちない部分が残ったのを覚えています。 8月の『ジゼル』公演が終わった翌日のレッスン後、バレエ団のスタジオでジュドさんと初めてお会いしました。黒で統一された稽古着を着ていらして、すーっと背筋を伸ばし微笑を浮かべて、スタジオで体を動かす東京バレエ団のダンサーたちを眺めていらっしゃいました。「ニンフ役の井脇
幸江です」と挨拶すると、特に表情は変えず にこやかなままで二度三度と頷かれただけ。何事にも動ぜず…といった風貌でした(もちろん、私はド緊張)。 ポーズの意味に関しては丁寧に説明をして下さいました。「牧神とニンフは強い者同士。そして互いに強い興味を持って近づくのだから、しっかりと僕を見て・・・それから段々と牧神の強さに押されて、上体を反らせるんだよ」「この時の顔の位置は僕の手のそば、ここで止めて。こうして牧神は興奮するんだ」と。でも言葉で教えて下さったのは、この2点だけだったように思います。あとは音楽と共に、ジュドさんと向き合っているだけで、私は自然と横向きのラインを意識するようになっていました。どこまでどう傾けるか・・・それは正面(目の前)にいるジュドさんが実際に見せてくれているのです。私は何も考えず、彼を感じているだけで良かった。頭は、使いませんでした。 お会いしたその日のリハーサルは45分ほど。私に関しては10分間くらいのことでした。でも「あとは舞台で」という感じで終了。ジュドさんのまとった空気から、不安や焦りは全く感じられませんでした。 翌日からは舞台でのリハーサルでした。私にとっては初めての東京国際フォーラム・ホールC。楽屋は個室だったので静かに、自分のペースで集中することが出来ました。 初日の舞台。私は幕が上がる前から“出”のポーズ(左手を右腰に、右手を左肩に置いたポーズ)をとったまま、舞台袖でジュドさんに釘付け!それは緊張しました。でもそこに居るのは、紛れもなく“パートナー”でした。踊り慣れているからと、私をリードするのではなく、極自然に音楽に戯れている“牧神”。だから私も気後れせず、ジュドさんの眼差しを受け入れ、ニンフとなって彼の目をじっと見つめることが出来たのだと思います。そんな、さり気なく自然なリードのされ方は初めてでした。 それからカーテンコール。普段はパートナーと、軽く打ち合わせをするのですが、ジュドさんとは一切無し。いつ、どのタイミングで手を出して下さるのか、互いに目を合せるのか、まるで分からない状態。正に「まな板の上の鯉」でした。緞帳の前に出た時の私の心境を言葉にすると・・・。「あ、ジュドさんから先に出るのね、当たり前か。まずは1回普通に挨拶。で?!あ、こっちを見た!もう1回ね?。あ!手を離された!こっち見てる!私もおじぎ。ジュドさん、ありがとう。それから?終わり?もう1回?・・・」というような、まるでデビューしたての小娘のようでした( ̄□ ̄;)。だからかな?ファンの方からは「ジュドさんの隣に居る井脇さんは、いつもより可愛く見えました」という声が多々寄せられました。 こんな初日でしたが、本番の回数を重ねながら自分がどんどん変化していくのを感じました。例えば、牧神とニンフが目と目を合せるポーズでは、言葉が交わされるようになっていきました。私の勘違いかな?
だとしても、私の心の中には言葉として文字には出来ないけれど、擬音にも似た音色が流れていました(音楽が体から鳴っているような感じかな)。 舞台は、素晴らしいものになったと思います。素直にそう思う。私のニンフも良かったと言っていただきましたが、自分に関してはまるで実感が持てませんでした。ジュドさんとだからあのような表現が導き出されただけで、決して私の実力とか演技力ではないからです。バレエという芸術の深さ、そして自分の未知なる可能性にも少し触れることが出来たように思います。 あの時私が居たのが、“芸術というバレエ”の世界だったのではないでしょうか。 ジュドさんとの共演で私が感じたことは、決して自力では知ることの出来ない、雲の上の世界なのではないでしょうか。今回学んだことを忘れずに、これからも踊っていきたいと、強く思いました。完全や完成、終わりのない世界に自分が居ることを、素敵に感じられる数日間でした。 ジュドさん、ありがとうございました。 幸江より |
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