12月2日(土) 本物のリハーサルと、大切な後輩たち

すっかり木々が色づき、ちょっと寂しげではありますが、どの角度から見ても街が美しく見えますね。北の方では初雪の便りも聞こえてきました。私はちょっと体調を崩してしまいましたが、すっかり元気になりました。ご心配下さり、ありがとうございました。みなさまも寒さに負けず、元気でいらして下さいね。

さて、先週の金曜日の出来事を報告しなくては。
その日は、小林十市くんが久しぶりにスタジオに現れ、一緒にレッスンを受けました。数ヶ月ぶりに会ったんだけど、髪が短くなってちょっと茶髪。「髪型変えたの久しぶり、舞台があるからさ…」と言っていました。
始めは、ベジャール版『くるみ割り人形』のリハーサルを、ちょっと見学するだけのつもりだったらしいけど、ところどころで助言をしてくれてるなと思ったら、白熱していつの間にかしっかり椅子に座って、本気で指導してくれました!感動。そして以前から指導のために来団してくれている首藤君とセンターを割って鏡の前に座り、首藤君も快くその助言を受け入れ、細かい音楽の取り方や振り付けの意味など、2人してダンサー達に伝えてくれたんです。ホントにありがたいことでした。

特に、初めてフェリックス役についた松下裕次にとっては、ありがたかっただろうな。十市くんが踊っていたパートだから、特に細かく教えてもらっていました。でも「和則もだよ」と、1stキャストの古川和則の存在も忘れない気配り。十市くんの言葉でどんどん踊りが良くなって行くのを、他の団員達も目の当たりにし、食い入るように見ていました。これがリハーサルだよ!振り付けを覚えるためにリハーサルがある訳じゃない。この時間の重要性を、きっとみんな感じてくれたと思います。

それから私の踊る“パリ”。
同じ役を何度も踊るって、回数を重なることによって良くなるばかりではありません。気をつけて踊っていても、本来の振りから少しずつ甘さがでてしまったり、慣れによってポーズが崩れることはよくあることなので、私自身も少し不安でした。けれどフランス語の台詞の間の空け方や、ポーズでの体の角度などを修正してもらえたので、ホッとしました。この過程がないと、安心して舞台に立てないんだよね…それは何年経験を積んでも同じこと。「もう何度も踊ってるから大丈夫でしょ?」なんて、私にはうなづけるものではありません。
そして初役のパートナー、平野玲くんと木村和夫くん。あの独特な雰囲気をどう出すか、歩き方が難しそうでした。でも2人とも十市くんの言葉をヒントに、少しずつ踊りのニュアンスを見出しているようでした。
この2人がまた対照的で面白いんですよ。先輩である私と組むこと自体にも緊張している玲ちゃんは、『ドナウの娘』の公演中も、空き時間を見つけては上野の東京文化会館のリハーサル室で、一緒に(密かに!)練習していました。社交ダンスの基本的なステップを知らない私達は、誰かに教えてもらいたいと、教えを請う相手を探していました。すると若い男性ダンサー何名かが、習った経験があるとの事で、立ち方や組み方、足の出し方などを丁寧に教えてくれました。それも楽しいねと話しながら、ちょっとずつパを体に入れ込んでいきました。同じ場所で、(高橋)竜とおさる(氷室友)も、ビムの練習していましたが、ふと隣を見ると、竜とおさるも腕を組んで向き合い、真顔で私達と同じステップの練習をしているではありませんか!(><:)「これ〜、何してんのっ!」とスタジオ内は大爆笑でした。

一方カズくんは、『ドナウ』が終わってかなりホッとした様子(そりゃそうです)。でも既に『くるみ』の本番まで3週間を切っていたので、「侮ってると、痛い目に遭うよ〜」と忠告はしていたんだけど、なかなかののんびりムード。重たい腰を上げて振り合わせをしてみると、意外と難しいと感じたのか、毎日レッスン後に練習しようと言ってくるようになりました。雰囲気から入ったカズくんだったけど、「これ真面目にやらないとダメだね!(笑)」なんて、今さらながら焦りだしました。でもさすがはプリンシパル。踊りながら自分の空気にしていくのはとても上手くて驚きました。
玲ちゃんもカズくんも、個性をちゃんとぶつけてきてくれて、頼もしいパートナーです。両日とも雰囲気が全然違うんだろうな…。どんな風に見えるのかしら?私も楽しみです^^。
他にもグラン・パ・ド・ドゥ、ロシア、スペイン、ビム、マリウスなど…みんな「そういう意味だったのか!」と開眼したような微笑みを見せながら、十市くんと首藤くんの言葉に耳を傾けていました。良いリハーサルの時間を過ごせたと思います。
首藤君、十市くん、本当にありがとうございました。m(__)m

こういう教えを受けたあと、それぞれが自習に自習を重ねて、テクニックでも役作りでも、小道具の扱いでも…何でも良いから何かにこだわりを持って舞台に上がる日に備える。それこそがプロであり、そうでなくてはならないんです。
「振り付けをビデオで何となく覚えました、練習してたら間違えなくなりました、本番がきました」なんてことには、絶対にしてはならない!
群舞の一人ひとりが役を深く理解し輝かなくては、舞台は本物とは呼べないんだから。自分の役に感謝し、責任と誇りを持って舞台までの日を過ごして欲しいなと、強く思います。
だから良い舞台を作るそのために、教師や先輩から厳しい言葉を受けたって仕方ない。「どうしてあんな言い方するんだろう?」って、そこで泣くな!って思う(苦笑)。そんなヒマがあったら、何を言われたのかを考える時間を持った方が良い。
そして教師や先輩も、相手から嫌われる事を恐れて言葉を濁したらダメ。もちろん、感情に流されて、故意に相手を傷つけてはならないし、言葉も選ぶべきだけど、大きな声を出すこともあったって良い。相手は子供じゃなく、プロのダンサーで大人なんだから。いつもいつもニコニコ優しくなだめられないと、自分を省みれないなんて、大人として情けない。人はそんなに強いものじゃないけど、観客のみなさまに良い舞台をお見せしようという気持ちと、自分が成長したいという気持ちがあれば、強くなれると思う。自分に甘く緩いままでは、成長はあり得ないのだから。

でもね…。そういう信念でこれまで本気で相手と向き合い、必要と思う時には厳しい言葉もあえて使うこともあったけど、必ず相手に真意は伝わったし、それで絆が深まり、ますます一緒に舞台を作れる喜びを分かち合えてきた。でも悲しいかな…最近は単なる“いじめっ子”で事が終わってしまうことも出てきちゃった。すごく……残念。
もう、厳しい世界を厳しいと言うことは、難しい時代なんだと感じてはいたけど、みんながみんなそういう大人のプロ意識を持っている訳ではないことを、改めて思い知らされました。

そこで最近かなり落ち込んでいたんだけど、この日誕生日を迎えた智佳ちゃん(長谷川智佳子)を祝うために集まった(今年夏に退団した、大島)由賀子と3人で、ゆっくり話す時間を持ててだいぶ救われました。
由賀子はカラボスもミルタもメルセデスも、私の後を踊ってくれていましたが、彼女はお客様に満足してもらいたい・良い作品にしたいという一心で、多少私の注意に戸惑っても「期待してくれてるから厳しい事を言われるんだ」と、翌日にはケロリとして(したふりをして?)食らいついて来てくれました。
智香ちゃんとは同じ役を踊ったのは『真夏の夜の夢』のヘレナくらいだったけど、そういう由賀子と私の関係も近くで見てきたし、彼女自身が自習の鬼。とことん役にこだわって頑張る、バレエ団で一番の努力家です。だから私は、一本筋の通った2人が大好き。

その2人とバレエの話し、バレエ団のこれからの話し、恋の話し♪…そして“今だから言える、幸江さんのあんな言葉が怖かった、こんな言葉がありがたかった”…というような事を、2人とも笑顔いっぱいに話してくれました(私はタジッ^^;としてましたが)。由賀子は辞める時、自分の後を踊っていた後輩たち数人に、「幸江さんは厳しいことも言うし、難しいことも言う。時にはカチンと来るかもしれないけど、必ず学ぶものがある人だから、食らいついて行くんだよ」と言い残してくれたそうです。泣けるほど嬉しい。由賀子とは、本気でいくつもの舞台を、一緒に作ったもんね!だから今、こうして心を割って話せる友達になれたんだと思う。智佳ちゃんも苦しい経験も乗り越え、今また輝きを増したと思います。
こんな3人が集まっておしゃべりをはじめたものだから、そりゃあ長かった!^^;閉店時間を過ぎても追い出すことなく、黙って翌日の仕込みを始めたオーナーには感謝です!お料理もとっても美味しかったから、また行こうね♪今度行った時は、ちゃんと写真も撮ってきますね(この日の写真をUP出来なかったのは残念!由賀子&智佳子ファンの皆さま、ごめんなさいm(__)m)。

誤解の無いように最後に付け加えさせていただきますが、彼女たちの他にも高いプロ意識を持って、最高の舞台を作ろうと努力している後輩はたくさんいます。それは本当に嬉しく感じてるし、そういう後輩たちのためにも、私も最後までしっかり踊る姿勢を崩さないように胸を張っていようと思っています。
厳しさの裏にある真の思いやりを理解してくれる後輩が「頑張れ」と支えてくれていたら、私はずっとこのままみんなと一緒に居たいと思えるんだろうな。。。

                                      幸江より