7月29日(土) 熱〜い『ドン・キホーテ』

世界バレエフェスティバル。いよいよ開幕しました!
千秋楽の、8月19日の大阪公演『ジゼル』まで先は長いけど、気持ちを常にグッと前に押し出して、頑張り抜かなくちゃ!と思っています。

今日の舞台はいかがでしたか?楽しんでいただけたのではないかと思います。
ソリスト陣はそれぞれの個性を光らせていたし、群舞もちゃんと作品に参加していた(ヘンな表現だけど)。
主演のお二人、タマラ・ロホさんとホセ・カレーニョさんはとにかく明るくて芯が強い。バレエ団全体をぐんぐん引っ張り上げてくれたと思います。

リハーサルで初めて我々の中に入った日、そのラテンのノリというか明るさに圧倒されました。それと同時に「これぞドン・キ」と思わせる仕草や踊りが満載の彼らの踊りに、バレエ団全体が触発されて、みんなの演技や踊りが自然と変化したんです。私はそれをスタジオの脇で見ていて、とても興味深い瞬間を見た気がしました。それは言葉では説明出来ないものなんでしょうね?
見て、同じ空気を吸って、目を合わせただけで、こちらをもスペインの広場へと連れて行ってくれたお二人の素晴らしさは、誰もが感じたものだったと思います。

さて本番。“若いジプシーの娘”
私の中では、気持ちと音楽、そしてテクニックが良いバランスを保てて、今の気持ちをしっかり出せたと思います。今回踊るにあたって、私の心を大きく変えたのはサヴィーナ先生の一言でした。

「たった一つの恋を思い出して踊りなさい…」

これまでは「過去の恋愛」を思って踊ってきたけど、“たった一つの”しかも“恋”なんだよね!この言葉を聞いたとき、ものすごーく切なくなった。
舞台に出る前、自然と自分の置かれた身分と立場を思って悔しくなった。
「もっと恵まれた環境に生きたかった。そうすれば、あの人も去っていかなかったかも知れないのに…。望んでも仕方のないことだけど、希望を捨てられない。けれど希望を持った次の瞬間には、現実を突きつけられる。」
そう思うと悲しくて悔しくて、ぶつけどころの分からない怒りが湧いてきました。そしてそれは悲しみに直結します。こんな堂々巡りの思いを、音楽にのせられたように思います。
指揮者のソトニコフさんとは、昨日のリハーサル後も個人的に打ち合わせをして、今日のリズムが生まれました。それは私にとって、とても心地よいものでした。
あのような踊りって、テンポと気持ちが合わないと非常に苦しいんです。音楽が早すぎると気持ちを出し切れないし、遅いと間があいてしまう。けれど今日は自分で指揮をしているみたいに全てが気持ちよい速さで奏でられていました。ソトニコフさんありがとう!

ヘアも自分の髪だけを使ってセットしていただきました。髪をアイロンで巻くときも、「このくらいのカールで」とか「後ろにもう少し膨らみを出したいな…」と、少しの妥協もせずに注文を出しました。その希望通りに作って下さり、今日は鏡に映る自分を見るのがちょっと嬉しかったな♪星野さん、ありがとう!

1幕のみの出演だった私は、2幕を下手袖から観ていたんだけど、後輩達の頑張りには時折鳥肌が立ち、少しずつ成長している姿を見て、本当に本当に嬉しかった。ほんの少しアドバイスをしてあげた人たちからは、終演後に「ありがとうございました」って声をかけてもらって、すごく嬉しかった(^。^)。こちらこそ、どうもありがとうね?でももっと先へ、一緒に前進して行きましょう!

最後にこぼれ話を1つ。
昨日のゲネプロ。ジプシーのシーンで、私はトランプ占いをしていました。そこへタマラとホセが来て、占ってあげました。いつもなら占いを終えると、私は踊るテンションへと気持ちを移行させるんだけど、その日は占いが終わると、今度は「手相をみて♪」と、タマラが手を出してきました。「え…」と思いながらも、笑顔で「良い手相をしているわ」とマイム(仕草)を返すと、「じゃ僕のは?」とホセ。「え?ん…」と、みてあげていると、「僕たち、結婚できるかな?」と聞いてきたんです。苦し紛れに「そうね」と笑顔で返していると、野辺くん演じる人形芝居の親方がやってきて、私を立たせ、踊りへといざないました。
「どうしよう、何か楽しくなっちゃってこのままじゃ踊れないよ〜」と言うと、野辺くんは「ココからですよ、幸江さんっ!」と励ましてくれました。
もちろん、ちゃんと踊ったけど、このまま本番を迎えるのはちょっと不安だったので、1幕終了後、通訳の方を介して「私の踊りは、暗く沈んだ気持ちで踊りに入りたいの。二人とのお芝居はとても楽しいんだけど、ジプシー達の曲の途中から、私をそっと一人にしてもらえない?」と、ニコニコ笑っているかと思えば突然暗い顔をして踊り始めるふりをしたりして、冗談っぽくお願いしました。すると「あ〜そっか、分かった分かった」と、納得してもらえたのです。おかげで今日は、一連の占いが終わると、二人は仲良く自分たちの世界に入っていました。おかげで今日は、自分の芝居をし、踊りへと全神経を集中させることが出来たのです。めでたしめでたし。。。

タマラとホセはとても仲が良くて、バレエ団とのリハーサルの時も非常に和やかでした。だからみんなで作品を作ったという感覚が持てたような気がします。彼らがこれからAプロ・Bプロでも魅力を沢山発揮してくれることを期待しています。

しかし、この『ドン・キホーテ』(ワシリーエフ版)は、素晴らしい作品だと思いませんか?私は大好きです♪皆さまからの率直な感想を是非お聞きしたいので、お時間のあるときにでも、メールを頂けたら嬉しいです。ダンサーへの言付けも、ちゃんとお伝えしますので(^。^)

明日は『白鳥の湖』のリハーサルです。またガラリと違った雰囲気の作品になります。そして我が東京バレエ団から、日本を代表して上野水香が主演します。玄米のおむすびで応援しよっと。

それでは皆さま、劇場でお会いしましょう!

                                      幸江より