3月5日(日) マラーホフさんとの『眠れる森の美女』皆さま、こんにちは。 先月、ウラジミール・マラーホフ新演出による『眠れる森の美女』の公演が終了しました。 キャストが発表されたのは今年に入ってからで、“シンデレラ”という私の役に対して、仲間からはかなり冷やかされました。でも…自分の中では拒否反応は無く、どうやって役作りをしようかな?と、楽しみでした。冷たい役を演じることは多いけれど、それが私の全てではないことは、皆さんは理解してくれていますよね? シンデレラの振りうつしは、マラーホフさんが直接指導してくれました。プログラムに載っている写真はその日のものです。彼が振りの細かい部分をド忘れしていたりすると、「(ベルリンの舞台の)ビデオ見た?どうなってたっけ?(
;^^)ヘ..」と、ちょっぴり恥ずかしそうに聞いてくるので、「ビデオではこうだったよ」と見せると、「ゴメンナサ〜イ」と日本語であやまりながら、正しい振りを思い出して教えてくれました。 マラーホフさんと東京バレエ団の間には、長年一緒に踊ってきたという信頼感があるから、どのパートもピリピリせず、リハーサルはとてもに和やかに進みました。そして1週間後、振り付け助手として来てくれた、ヴァレンティナ・サヴィナさん(ベルリンバレエ団バレエミストレス)とバトンタッチするように、マラーホフさんは一度帰国されました。 そして今回、彼女は期待をはるかに上回る愛情を、私たちに注いでくれました。 またレッスン後、リハーサルまで時間が空くと、いつまでもスタジオに残って、自習しているダンサーにアドバイスをしに近寄ってきてくれる。そんなちょっとの合い間を見つけて、私は今回の作品とは違うけど、どうしても助言が欲しくて、『ジゼル』のミルタのある部分の体の動かし方を聞いてみました。すると、彼女の顔色がサッと冷たくなり、目を伏せてミルタに変身して見せ、踊ってくれたんです。「この時、上半身に力が入って自由になれない」と伝えると、彼女は黙って私の両肩を持ち、あるポジションを作りました。そして「これでやってみて」と。すると魔法にかかったみたいに、体が自由に動いたんです。私は驚いてポーっとしていると、彼女の方がまるで時間を惜しむかのように、「他に聞きたいことはない?そのために来たんだから、何でも聞いて?」と言ってくれたのです。こんなチャンスはない!と、私はミルタの振りを頭で追いながら、「ここも」「これは?」と、ほんの少しでも疑問に思っていたところを聞く事が出来ました。『眠り』の指導でいらしているのに、『ジゼル』のことで質問するなんて非常識だと思い、何日も葛藤していたけど、「もっと良い踊りをしたい」という一心で、リハーサルの邪魔にならない時を見計らって、声をかけて本当に良かった。それは10分にも満たない時間だったけれど、道が開けたような気がしました。与えることを真に喜ぶ姿が、そこにはありました。本当に感謝しています。 そして2月に入り、本番5日前に再びマラーホフさんがやってきました。そこからは舞台でのリハーサル。衣装を着けて、装置と照明を調節しながらの作業でした。特殊メイクを施さなければならないメンバーは、その段階からメイクをしてもらっていたけど、カラボス役の芝ちゃん(芝岡紀斗)はじめ、カタラビュットの野辺っち(野辺誠治)、猫の美智子(前川美智子)やブルーバードの和則(古川和則)など、はじめはかなり奇抜に見えました。メイクはそれぞれ決まってはいたけれど、日本人の顔に合うように、本番の時は少し変化していたように思います。そういうところがプロだよね!「これはこう」と決めつけるのではなく、その時に一番映える方法を探す。私はそういう柔軟性がある人が大好き。ちなみにメイクさんはベルリンから来てくれていました。もちろん、日本人スタッフも協力して。衣装・メイク・ダンサーがまとまる良い舞台稽古の日々でした。 さあ、いよいよ本番!これだけじっくりと練習し、マラーホフさんと一緒に作り上げてきた『眠れる森の美女』。各々のパートが役を良く理解して踊っていたように思います。今回賛助出演してくれた芝ちゃんの存在感も好きだった。カラボスなんだけど、どこか憎めなかったのは、マラーホフさんの演出はもちろんだけど、芝ちゃんの人の良さが出たのかな?リラの精を踊った水香(上野水香)も、長くて重たい衣装と格闘しながら、持ち前の安定したテクニックで、さすがという感じ。楽屋が私と2人だったんだけど、舞台が終わって衣装を脱ぐ度に「う゛わぁ〜」と、開放感たっぷりのため息をついてたっけ(笑)主演した美佳ちゃんもベストを尽くせたんじゃないかな。 今回の私の役作りについて、ちょっと触れておきますと…。シンデレラが『眠り』の中で、どう存在したら良いのか、東京バレエ団ではない役なので手探り状態でした。でも色々と考えて達したのは、「シンデレラとして、ただ幸せいっぱいに踊れば良い」というシンプルものでした。これからプリンセスになっていくシンデレラだから、姫らしさよりも、素敵な人と結婚出来る喜びにあふる女性でいようと思いました。一人で舞台に現れ、王子様が見えずに不安がる。そこから王子様と見つめ合って二人で踊る時には、「この人たち幸せそう♪」って思ってもらえるような幸福感を出したかった。カズ(木村和夫)王子とははじめ、「(普段濃い役どころの)我々が踊っても、誰もシンデレラと王子には見てくれないよね〜。木村と井脇だぁ!って感じにならないかな?」と、冗談を言っていたんだけれど、本番ではラブラブだった…つもりです。。。はい。 このような調子で舞台を迎え、みんな今回だけの『眠り』を楽しんだのではないでしょうか。いつに無く、最終日にはみんなで写真大会!こういうメイクや衣装は珍しいので、達成感と共に開放感もあって、みんな満面の笑みで撮り合いました。 サヴィナ先生にお礼を言うと、「私がいつも心がけているのは、元気でいることよ。でないとダンサーは辛いもの(^o^)」と、笑顔で話してくれました。この時、教師として真に尊敬出来る人に出会えた喜びで、胸がいっぱいになりました。1ヶ月間、舞台の成功のために力を尽くして下さったサヴィナ先生。本当にありがとうございました。 マラーホフさんも、舞台後の挨拶で「東京バレエ団のみなさんに、僕の『眠れる森の美女』を上演してもらえて、本当に嬉しかった。ありがとう」と、満足された様子でした。踊るだけではない苦労がたくさんあったと思うけれど、本当にお疲れ様でした。そして、こちらこそ、ありがとう! 先ずは明日の大阪公演に同行します。今回は立っているだけのミルタだけど、衣装をつけて舞台に立てば、次の友佳理&フィーリン主演の『ジゼル』に向けて、いっそう気分が高まるでしょう!サヴィナ先生から頂いたアドバイスも生かして、次の舞台に向けて頑張ります。 皆さまも、季節の変わり目で体調を崩されないように、お気をつけ下さい。 幸江より |
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