2月1日(日) 『中国の不思議な…』配役?

「ねぇねぇ志織ちゃん、私たち“若い男”ってなってるよ?で、和則と正樹が“娘”だって、これ逆じゃないのかな?」

ベジャールさんのお体の具合が悪く、残念ながら今回は来日する事が出来なくなってしまい、『今日の枕草子』の世界初演は延期となりました。しかしベジャールさんのお考えで「東京バレエ団なら…」と、『中国の不思議な役人』の上演を許可して下さったのです。現在は前回の『火の鳥』に引き続き、小林十市くんが振付指導に来てくれています。数週間前にキャストが発表になったのですが、張り出された紙にはこのように、私と志織ちゃんには“若い男”役が与えられていました。そしてそのキャスト表を前に、私の頭には「?」が浮かんでいたのです。

何年か前、ベジャールバレエ団が来日した時の演目に、『中国の…』が入っていたので私も観ました。男性ダンサーが黒いスパンコールに身を包み、口紅を注してヒールで踊る様は衝撃的でした。それが“娘”という役だったのです。当時はクーン・オンズィアさんが踊られていましたが、男性が女装して男性を誘惑しては騙す…濃厚なシーンもあったので、それまで観たバレエ作品とは全く違って見え、鮮明に記憶に残っていました。ジル・ロマン演じる役人の、語るような踊り。オンズィアの生き生きとした姿は、映画のスクリーンを見ているかのように、目が釘付けになりました。舞台はお芝居もミュージカルも、何処を見るか、誰を観るかは観客の自由…というところがあると思いますが、この『中国の不思議な役人』では、「ココを見せる」というくらいに、その動きには特徴と意味があって、瞬きするのももったいないくらい。演じる側にも、一瞬たりとも素に戻る事の許されない(全てがそうではありますが、特に)重さがあるように見えました。そんな異色な作品ですから、当初は我々に出来るのかと不安もありましたが、ベジャールさんが「東京バレエ団なら」と信じて下さったのですから、きっと出来ると思えました。
十市くんの指導もとても段取りが良く、無駄な時間のないスケジュールの組み方で、ダンサーの個々の意識を尊重してくれます。そして的確な注意がストレートかつスマートな言葉で伝えられるので、理解も早く実に有意義!褒めすぎじゃない?と思われるかも知れませんが、教える側と教えられる側に溝が無く、信頼関係が保てているのは、本当に素晴らしいと思うのです。

私は自分のリハーサルに入る前に一度だけ、ベジャールバレエ団の『中国の…』をビデオで見ました。どれが私の役だ?と思いながら。。。「これかな?これ女の人だよね?」と思うシーンがあって見入っていると、“娘”役の男性ダンサーにピョン!と飛び乗られてリフトのような形になったのです。その時は正に「ギョ!」という感じでした。ほんの数分の出番だけど、「ついに来たな、男役!」と、実はワクワクしていたのよね♪
十市くんに指導してもらいながら、始めは戸惑いました。「若い男はココから出て来て…」と説明されているのに、自分の事を言われている実感がなく、「娘、ちょっとこっちに来て」と言われると動きそうになったり…。私は普段、娘気分だったのね(図々しい?)。「女性の胸にしか興味が無いみたいに」「感極まって女性を抱くように」って言われても〜!実感湧かないよ〜(;´д`)今回ばかりはどうやって役作りをしたら良いのやら!誰か教えて〜っ(><)

そんなこんなで個々の振り写しが完了し、出演者全員でリハーサルするようになった頃、全員が衣装を着けて稽古する日がありました。この日のキャストは…役人=木村和夫。娘=古川和則。首領=窪田央。若い男=佐野志織。ジークフリート=芝岡紀斗。そして群舞。私は見学していました。でも単に通したのではなく、十市くんが何度か途中で止めて動きやニュアンスを伝えながらだったけれど、途中で音楽を止めようとも、踊りを止めようとも、ダンサー達は皆集中していて、緊迫した空気が途切れる事はなく、とても良いリハーサルでした。でも時には十市くんの話術で場が和んだり、ダンサーからは遠慮なく質問が出るなど、スタジオの空気が生き生きしていました。こういう空気が、私はたまらなく好きです。そして何度も上演した作品を練習する時であってもこうあるべきだと、強く思いました。作品が完成に近づいていくのを見て感じるのは、とても素敵な事です。

和則や正樹たち、ヒールを履く男性は靴擦れに悩まされたり、「外反母趾になりそう」と嘆いていますが、「爪が割れたりマメが剥けてもポアントを履いて踊ってる女性は偉いでしょ?」と彼らに言うと、「ホント尊敬しますっ!」と頭を下げていました(笑)。その反面、男性(娘役)をちょっとだけ抱っこして持ち上げる私も、「体重の重たい女性ダンサーを持ち上げるのは大変な事なんだね」とちょっぴり実感。私も志織ちゃんもすぐに筋肉痛に悩まされましたから。。。彼らには、捻挫などに気を付けて頑張ってもらいたいです♪

このHPの『NEWS』のコーナーにも写真と共に公演日程などをお知らせさせて頂きました。『今日の枕草子』は延期になりましたが、是非この『中国の不思議な役人』も観て頂きたいと思っています。他には私の大好きな『春の祭典』と『ドン・ジョヴァンニ』を上演します。ちなみに私が『中国の…』で男役で登場するのは2月13日の予定。『春の祭典』で後藤和雄くんと生贄を踊るのは2月11日と14日の予定です。『ドン・ジョヴァンニ』では、毎日太田美和ちゃんと共に、凸凹コンビで頑張ります。ベジャールさんの作品は遠くから全体を観るのも1つの楽しみ方です。エコノミー券、学生(22歳まで)券など、NBSでは2000円からの席をご用意しておりますので、気楽に足をお運びくださいませ。お待ちしております(^o^)

では日記をご愛読(?)の皆さまにサービスカットを♪
下の2つの画像はリハーサル中のものです。キャストは「娘=大嶋正樹。若い男=井脇幸江」男(井脇)が娘(大嶋)を襲う(?)シーンと、感情が高ぶっている若い男のショットです(撮影:長谷川清徳)。これが衣装を着けて舞台に上がるとどうなるのでしょうか?私も楽しみです。

 

最後になりましたが、ベジャールさんのお体が一日も早く良くなり、心身共に健やかな日々を送る事が出来ますように…心からお祈り申し上げます。そしてこの舞台がベジャールさんのお心に届きますように、精一杯頑張ります!