12月8日(月) ポリーナ再びギエムとの公演が終わって、すぐに『くるみ割り人形』のリハーサルが再開されました。東京バレエ団が上演しているワイノーネン版は、クララを主演ダンサーが演じ、そのまま2幕のグラン・パ・ド・ドゥまで踊るといった、言わば大人向けの『くるみ割り人形』です。私が初めて主演させていただいたのもこの作品。そして初めてソリストの役を頂いたのも、この作品の“アラビア”でした。当時は3ndキャストあって、私は当然3番目。2組の先輩達と、更に以前からアラビアを踊られていた先輩方にも、細かく指導して頂きました。初めて大きな役をもらった時、私はその役の「色」を考えました。アラビアって色に例えると何色なんだろう?って。単にアラブの国を想像するのではなく、音楽と振り付け、衣装からイメージを得ようとしたんだと思います。特にストーリーの無いこの長い一曲に、私は何かを求めて踊っていたような気がします。もう15年近く前の話しだけどね。。。 さてさて、全幕を通して様々な役と絡まなければならないこのクララという役。充分なリハーサル時間を取るためにと、マラーホフの計らいで本番の1週間も前から2人は来日していました。通常はゲストと合わせるのはほんの2〜3日ですが、今回は本当に良く練習したと思います。ポリーナは前回の『眠れる森の美女』の時と同様、ほぼ完璧に振付をビデオで覚えてきていました。音楽は勿論、場所取りも完璧で、どのダンサーともぶつかる事無く、1幕のパーティの部分を踊って見せました。これからベテランになっていっても、この真面目さは無くさないで欲しいな。 何日かして、2人だけでリハーサルをしていた時、私もスタジオの隅で本番用のポアントを選んでいた事がありました。2人のリハーサルを片目で見ながら色んな事を感じた。出来なかった部分の練習の仕方や対処の方法、パートナーとのやり取り等、そういう部分がとても興味深いんです。ゲストから学ぶのもはとても多いですから。 ちょっとここでアラビアの話しを。今回のパートナーは芝岡紀斗くん。私にとっては5人目のパートナーでした。私たちは2ndキャストだったんだけど、急遽3日間踊る事になりました。芝ちゃんとは身長差もあるから、そう言う面ではとても踊りやすかった。でもどうしてもキャリアの差から来るものはあって、色々と指導しながらのリハーサルになりました。でも彼は器用な方なので、すぐに理解してくれてどんどんサポートが上手になっていきました。私たちが踊っているアラビアの振りは音楽いっぱいに詰まっていて、次から次へとテンポ良く呼吸を合わせないと続かないんです。根気良く、何度も何度も失敗しながら何とか本番の日を迎える事が出来ました。芝ちゃんに限らず、今回初めてディベルティスマンを踊った若いダンサー達は、レッスンがいかに大事で、体をコントロールした上で初めて演技や表現に神経を使えるかを実感したと思います。特に古典作品を踊る場合、男性ダンサーはテクニックに気をつける事はあっても、役について研究する機会は少ないでしょう。ピルエットが何回まわれたかがバレエじゃない。物語の中に身を置いて演じるという事の難しさと素晴らしさを感じて欲しい。マラーホフの足使いの繊細さをもっと感じとって欲しいと思っていました。舞台って、そんなに安易に出来るものじゃないんだから。今回、皆良く自習をしていました。きっとそんな事を感じたからなのではないかと、期待しています。 こうしてゲスト、バレエ団員共舞台に向けて気持ちが高まる中で本番を迎えました。私は1幕の客人の踊りが終わるとダッシュで楽屋に戻って、メイクを変え衣装を着るので精一杯で、2人の舞台はモニターテレビ(舞台を正面から映したもの)でしか見られなかったけれど、最終日、最後のシーンを終えて下手袖に小走りではけて来たポリーナのホッとしたような笑顔を見て、舞台の成功を確信しました。
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