12月4日(木) 『ミラクル・ガラ』2日目
その前に…『くるみ割り人形』お疲れ様でした〜!急遽3日間アラビアを踊る事になり、毎日スリルとサスペンス…あ、違った( ;^^)ヘ..踊れる歓びと集中の連続でした。今回も沢山の応援と感想のメールをありがとうございました。
この公演の事はまた後日と言う事で、『ミラクル・ガラ』の話しに戻ります。
翌3日、私は『春の祭典』で、後藤和雄くんと共に主演しました。
『春の祭典』は私が最も愛している作品です。1996年にベジャールさん本人から直接指導を受ける事が出来た上に、終演後は舞台の上でお褒めの言葉を頂いたという思い出があるからです。勿論それだけではなく、ストラビンスキーの音楽にも血を掻き立てられるし、その音楽がそのまま動きになっていうような振り付けには、群舞を踊っていた頃から魅力を感じていました。子供の頃に初めて『春の祭典』を観た時に一番印象に残ったのが、女性の始めのシーンでした。ヒトデが海の底に沈んでいるように見えたのが、子供ながらに衝撃的で、静かだけれど心地よくは無い不協和音の中で動くその“物体”が立ち上がってみたら女性達だったと分かった時にはとても不思議な気持ちになりました。それまでトゥシューズを履いておどる舞台しか観た事のなかった私は、目を釘付けにされたのを覚えています。そのような思い出もあるからでしょうか?この作品を踊る時はいつも、神聖な気持ちになります。責任感と踊れる歓びに満ち溢れていて、背筋が伸びるような…でもそれは“緊張”とは違う。いつか日記にも書いたけど、“集中”なんです。
リハーサルでは、今回初めて群舞のリハーサルを指導するという機会を得ました。東京バレエ団初演の時から踊ってきたメンバーが、男女それぞれ、後輩の指導をする事になったのです。これまで、ビデオに頼ってきた振り写しを、先輩から口頭で伝えていこうというバレエ団内での動きがあったために試みられたものでした。それは本当に実りのあるものだったと思います。先輩達は指導する責任を自覚し、作品をもう一度見直しました。後輩達も、ビデオからは理解する事の出来ない細部までの意味を知り、さらに作品を深く理解する事が出来たと言ってくれました。指導補佐をしたのは、女性が佐野志織ちゃんと私。男性は高岸直樹、首藤康之、木村和夫、と言った面々でした。その上で、芸術監督である溝下司朗先生がニュアンスを伝える事で動きに血が通い、生きた作品になったと思います。そうやって今回群舞を教えるにあたって、『春の祭典』という作品を違った角度から見直す事が出来て、更に魅力を感じる事が出来て本当に素晴らしい経験だったと、志織ちゃんと、指導させてもらえたことに感謝していました。正直その分、自分がリハーサルで踊る機会が減った事もありましたが、今回は生の音楽でバレンボイムさんの指揮と言う事もあり、音楽に負けたくないという思いも私にはありました。競争するという意味ではなく、正に共演するという対等な立場になりたかった。勿論、それは無謀な挑戦だけれど。でも、後輩達がビデオで振りを覚えて、ただ踊ると言う事を避けられたのは、とても良かったと思っています。今後も、後輩達には先輩の言葉を生きた言葉として聞き、自分の血肉にしていってもらいたい。そのためなら、私は労力を惜しまないつもりです。
そしていざ、東京文化会館入り。我々は2ndキャストだったので、バレンボイムさんとリハーサルするチャンスはありませんでした。そう、ぶっつけ本番。でもリハーサルの時も初日も、舞台袖では和雄くんと音楽とのタイミングを合わせていたので、そんなに不安ではありませんでした。
私はいつも『春の祭典』の時は幕が上がる前から舞台袖に居ます。普段は楽屋が好きで、いつまでも楽屋に居る事が多いのですが『春祭』は別。しかも何故かいつも上手(かみて舞台に向かって右側)に居るの。男性陣の息遣いを感じながらウォーミングアップをするうちに、どんどん自分が動物になっていく感覚が好き。動物っていうと、野生的なイメージがあるかも知れないけど、私の場合は弱い草食動物のようなイメージ。弱肉強食のサイクルの中では真っ先に食われそうな弱い動物を想像しています。自然にそう思うの。
仲間の誰よりも先に冬眠から目覚めて、細い春の日差しを体で受けながら敵の気配を感じようとそっちに神経を張り巡らせている。仲間が1人、また1人と目覚めるのにも気付かず。そして体全体に日の温かさを感じた瞬間、仲間が皆起きていた事に気がつく…これが踊り始めに考えている事です。舞台から見て客席の一番上の遠くから、自分にスポットがあたり始める時、それは太陽の光に感じるんです。実際、本当にライトは温かい。そこからはただただ音楽に身を任せる。脇に立つオス、メスの視線を恐怖と強さを持って感じながら、自分が生贄としてささげられるまで、本能と理性に揺れる。
私は、動物にだって理性はあると思っています。子供の頃から野生動物のドキュメント番組が大好きで、よく父と見ていましたが、動物も悲しそうな顔をしますよね?嬉しそうな顔はしないけど、悲しそうな顔はすると思う。そこが子供ながらに悲しいと思っていました。繁殖は快楽ではない。そこが人間とは違う気がする。子孫を残す事は戦いでもある。自分の中にも動物の血が流れている事を感じる事出来るのは『春の祭典』だけです。
お姫様や少女、悪魔、幽霊を演じるのとは違って、私そのままで良い。だから恐いしだから楽しい。私にとって、音楽と振り付けと衣装と感情、そして肉体が合致する作品、それが『春の祭典』なんです。
バレンボイムさんの奏でる音楽は、正に“生きたストラビンスキー”でした。細やかな楽器の音。テンポもとても踊りやすかった。もうね…言う事はないです!本当に幸せでした!!
バレエ団内の縦のつながりを深めるきっかけになったリハーサル、そして十市くんの存在。バレンボイムさんとシカゴ響。生きてて良かった〜♪舞台が沢山の人々の力によって成り立ち、それを観客の皆さまに届ける。本当に舞台芸術は素晴らしい。本当に私はバレエが大好きです。そしてこうして舞台に立てる事を神様に、全ての方に感謝しています。 |