11月24日(月) 『ミラクル・ガラ』初日

あっと言う間にもう24日か…マラーホフ&ポリーナも来日し、週末の『くるみ割り人形』の本番に向けて休日返上で頑張っておりますが、まずは日記の続きを。。。

11月2日、3日と『奇跡の饗演』が東京文化会館で行われました。世界三大オーケストラのひとつ、シカゴ交響楽団。そして現在その音楽監督を務めるダニエル・バレンボイムさんとバレエの“饗演”でした。演目はモーリス・ベジャールさんの『春の祭典』『火の鳥』そしてシルヴィ・ギエムさん主演の『ボレロ』でした。
創立以来、40年間東京バレエ団を率いてきた佐々木忠次団長の古希のお祝いにと、バレンボイムさんとシルヴィが出演を申し出て下さったとの事。佐々木団長の国境を越えた、幅広い長年の活動があってこそ実現した「奇跡」の舞台。この舞台に出演できた事は、本当に幸せな経験だと感謝しています。
佐々木団長、70歳のお誕生日おめでとうございます!これからもエネルギッシュに、東京バレエ団を引っ張って下さい!

それからもうひとつ。これまでも東京バレエ団のレパートリーとして長年踊られてきた『火の鳥』を、今回は元ベジャールバレエ団の小林十市くんが改めて指導してくれるといった機会にも恵まれました。彼と東京バレエ団とは交流が深く、ベジャールさんの『M』で、彼は振り付け助手をすると共に共演もしました。言わば気心のしれた仲間のような存在です。
今回の『火の鳥』は振りや構成が変わったり、音の取り方やニュアンスも変わった部分があって、作品が生まれ変わったと言えるでしょう。すでに上演されてきた作品の振りや音楽の取り方を変えるという事は、作品を生き物として捉え、風化させることの無いベジャールさんには珍しい事ではありません。今回の『火の鳥』も、踊ってみてさらに意味の深い作品に変わったいう印象がありました。その上パルチザンの衣装も新調♪以前より踊りやすくカッコ良くなりました!急遽作り直す事になったので、衣装スタッフも大変だったと思いますが、私はとても気に行っています♪スタッフの皆さま、ありがとう!

初日の舞台で私は『火の鳥』のパルチザンを踊りました。佐野志織、遠藤千春、後藤和雄、芝岡紀斗、窪田央、古川和則、平野玲、私。このメンバーで3週間に渡って、ほぼ毎日リハーサルを重ねて来ました。パルチザンは、火の鳥(木村和夫)を含めた9人で1つのチームのような感覚があり、リハーサル中も良く話し合いながら、呼吸を合わせたり、それぞれが効果的に動けるようにと作っていきました。今回十市くんから最も要求されたのはその“呼吸”でした。みんなの呼吸を一つにする事で前半の静かな部分と、後半の勢いのある部分をさらに意味深いものにしていこうというものでした。これまでは首などでアクセントをつけていた部分を、アクセントで合わせるのではなく、呼吸で合わせるように言われたんだけど、それがなかなか難しかった。各々、音楽に対する感じ方が違うダンサー達が、一つの呼吸を感じると言うのはとても大変な事なんです。だからそれを常に要求される群舞、コール・ド・バレエは難しい。ソリストを踊るようになると、自分の呼吸で踊れるようになるから、久しぶりに仲間の呼吸を感じて動く事には新鮮さがあって楽しかった。長年群舞も踊ってきた私には、皆と合わせて踊る喜びも知っているから楽しめたんだろうな。皆の呼吸が1つになって奏でるダンスは、本当に素晴らしいと思っています。

それから“目”の使い方。目に意思を持ってもっと強くと要求されました。踊り慣れてきたものだからこそ、体が勝手に反応して動いてしまっていた部分を、目が先行して体がそれに反応していくという連鎖は、作品を理解していなければ出来ない事だと思います。なぜそこに行くのか、なぜ手を上げるのか…それが分かっていなければ、踊る事は出来ない。だから、動きの1つひとつが新鮮で呼吸が合う事によって、作品がさらに膨らんで深くなったと踊っていて感じる事が出来ました。これは十市くんから生きた言葉や注意を聞く事が出来たから。今後後輩達には私たちがそれを伝えていかなくてはならない。これってとても重要な事だよね。

そうやって濃いリハーサルをしていたからこそ、今度は音楽とどう共存するかが問題になってきました。バレエ専門の指揮者ではないバレンボイムさんが、どこまで“動き”に合わせて下さるのか、音楽家として譲れないテンポがあって然り。十市くんもそれは心配してくれていました。確かに踊っていて「うわ!」と思うテンポもあったけど…でも何か違う。カズくん(木村)とも話したんだけど、演奏される音楽には「早いなりの意味を感じるから不快ではない」と。連れて行かれる感覚と言えば良いのかな?音楽に体を持っていかれる…悪い意味の「持っていかれる」ではなくて、のせられるような感覚でした。確かに技術的にはテンポが早いと崩れやすかったりする部分もあったと思うけど、カズくんは精一杯誠実に、それに応えていたように思います。同じ舞台上に居てそれを感じた。彼の踊りに対する誠実さが光ったと思います。
我々パルチザンも、いつものMDのテンポとは違うからこそ、例の“呼吸”が大事になってきて、多少音楽とズレる場面があったとしても、決してダンサー達はバラバラにならないというような強い繋がりを感じて舞台上に居た気がしています。
こうして踊ったバレンボイムさんと私達の『火の鳥』も、奇跡の経験に近いものだったと思います。ドキドキもしたけど、とても貴重な体験でした。

ちょっと余談ですが。。。本番が終わってから、私は3日後に迫っていた札幌公演での『ギリシャの踊り』のパ・ド・ドゥの練習を晴雄くんと行いました。それも舞台を使わせてもらえたんです!音楽も音響さんが練習に付き合ってかけて下さいました。「本番が終わってもこうやってレオタードを着て舞台に戻って練習できるなんて、すごい幸せだね♪」と互いに話していたのですが、仕事を中断して舞台を空けて下さったスタッフの協力があったからこそです。東京バレエ団の舞台スタッフは本当にプロフェッショナル!「出来ません」という言葉を聞いた事が無い。何とかいい舞台を完成させようと、振付家やダンサーの要求に最善の方法で応えてくれます。私はそれが自慢で、スタッフの事が大好きなんです(*^.^*)
それに、終演後かなりの時間が経っていたはずなのに楽屋口で待っていて下さったファンの方もいらっしゃいました。もう感激でした!皆さま、ありがとうございました。

「ミラクル・ガラ」の初日は、様々な感動に包まれて過ぎてゆきました。そして翌日はいよいよ私の宝物『春の祭典』です。