5月31日(土) 新・旧カラボス対決!

ちょっと話題が古くなっちゃったけど…《世界バレエフェスティバル全幕プロ『眠れる森の美女』カラボス特集・第2弾!》をお送りします。

ご存知の通り、今回は大島由賀子と私がダブルキャストでカラボスを演じました。由賀子はこれまでにも『白鳥の湖』で“三羽の白鳥”や“スペイン”を踊るなど、何かと私のダブルに付く事が多かったのですが、キャストが発表になる度に、すぐに私の所へ来て気持ち良く「よろしくお願いします」と挨拶に来てくれたり、リハーサルで踊った後は必ず何か注意はないかと聞きに来る、とても研究熱心な後輩なんです。だから私は彼女をとても可愛がっているのです(^o^)フフフ。その彼女がカラボスのダブルに付いた時は、私も嬉しくて、咄嗟に彼女のところへ行って「頑張ろうね?」と励ましました。すると彼女は腰を抜かしたようにハラハラと床へ倒れ込み、嬉しさと不安が混ざり合ったような複雑な顔をして「幸江姉さ〜ん」と甘えてきました。でも由賀子は芯の強いしっかり者。私は由賀子がどんなカラボスを作り上げるのか、楽しみでした。

彼女に、振りを教えたり、マイムの意味や音のとり方を伝えていくうちに、私にも新しいアイディアが浮かびました。そして言葉にする事で忘れそうになっていた事を思い出したりと、プラスになる事は沢山ありました。そこで前の日記にも書いたけど、「シンプルに戻してみよう」と思いついたのです。「カラボスはどうしてこんなに怒っているんだろう?」「何故16年間も恨み続けたんだろう?」「何がここまでさせたんだろう?」と、原点に戻って役作りをしていきました。人は何に怒るのか…それは大事なもの、大切なものを壊された時。それは物に限らず気持ちもそうですよね?そんなヒントを友人の言葉から得ていたので、カラボスが最も大事にしていたものは何かと考えたら、それは“私・自分”なんだと思いました。「この“アタシ”を招待から外すなんて!」自分を蔑ろにされた事が、カラボスにとっては耐え難い屈辱だったんだと。だから式典長に対して「お前が“アタシ”を呼ばなかったのか!」というマイムを最も強調しようと思いました。そこから始まる復讐劇。式典長本人をこらしめるだけではなく、何の罪もない赤ん坊にまで矢を向ける。しかも今この場ではなく、16年という間の成長は許し、王や王妃にも幸福感を味わわせておいてから呪い殺す(書いてても恐ろしい…)という計画を思いつき、妖精達や貴族達を不安のどん底に陥れて去っていく。。。日々役作りをしていて、自分がこういう事を思いつく事が怖かったよ(笑)そして従者役の4人のダンサーと、もっと一体となりたかった。今回のカラボスについて、私の頭の中はこの2点に絞られていました。

だから「今回は怖さが増した」「本当に怖いカラボスだった」という感想を沢山お聞きして、考えた事が伝わった事を嬉しく思いました。従者役の4人のダンサーともアクセントをつけるタイミングやお互いの芝居の間合いを調節したり、こんなにコミュニケーションを取った事は無いと言って良いほど、細部にまでこだわって舞台に立つ事が出来ました。
吉田和人。彼は普段とても人当たりが良く穏やかだけど、自分の失敗を許さないといった厳しい面を持っていて、信頼の出来るダンサーです。「THE KABUKI」の坂内、「白鳥の湖」の道化、ベジャール版「くるみ割り人形」のビム、そして私のお気に入り「ドン・キホーテ」のガマーシュ…など、ソリスト中のソリスト。可愛らしいキャラクターから悪役まで幅広い演技の出来るダンサーです。
平野玲。彼とは一緒に遊びに行ったりと、以前から仲良しで、私が自習中にみんなに厳しい事を言うと、彼がフォローに回ってくれるといった潤滑液の役目を負ってくれていて、彼が居てみんながまとまれる様な気がしています。彼のフェルメ(両足で飛んで足を大きく開いてから、再び両足で着地するパ)はすごく綺麗♪私はフェルメが嫌いだから羨ましい…。
古川和則。彼は意外と(?)不器用で、何度も何度も繰り返さないとリフトやサポートのコツが伝わらない^^;けど何かやり難いところはないか、常に気を使ってくれる。「針が無〜い」事件の犯人です(笑)。
そして今回初めて従者に加わった中島周。自習中殆ど口を利かず、黙々と私の注文に応えてくれる。シャープな動きが出来るのに、たまにズッコケては3人の先輩から突っ込まれるなどこれまた意外なキャラクターの持ち主。
この4人と踊るのは今回が最後。これまでの中で最も信頼の出来た4人だと思う。和人、玲ちゃん、和則、周くん、どうもありがとう。

さて、ここで由賀子本人からの言葉をご紹介します。日記のゲストはたまちゃんに続く2人目だね。。。

<お邪魔させていただきます。由賀子です。幸江さんからこの“宿題”を出されたのは、興奮冷めやらぬ‘白鳥の湖’終演後の楽屋でした。無我夢中で踊ってきた私は、その時になって初めて‘カラボス’を振り返って考えてみることになりました。
実はカラボスって、悪役のくせに団員にかなり人気のある役なんです。当然注目度も高い…私が入団した時は既に幸江さんがカラボスを踊っていて、初めて見た時は衝撃を受けました。チュチュを着ているカラボスなんて見たことがなかったし、幸江さんのカラボスは美しく、でも目も合わせられない程に怖い・・・「キャー!かっこいいっ!」って、お気楽に憧れていました。おかげ様で、今回の配役表が出た時は、アゴがはずれました…(・0・)
それから数ヶ月、寝ても覚めても頭はカラボスで一杯。完全にとりつかれました。そんな中、考えて考えて、まず自分の中で3つの事を決めました。トウシューズを履く役だからステップは疎かにしない事、自分のペースを大事にする事、そして幸江さんの完全コピーだけは絶対にしない事。と、大きく出たものの大役初心者の私には何から手を付けたらいいのか見当もつきません。幸江さんは、戸惑う私に、振り、音の使い方、場所の使い方、役作り、メイクに至るまで…カラボスの全てをひとつひとつ丁寧に、でも厳しく根気良く教えてくださいました。(実は幸江さん、リラの精のゆい(福井)にも私と同じように指導をしていたんです!なかなか出来ることではないですよね(;_;))
おかげで私は、ほとんどビデオに頼らず生きた指導と意見によって役を作るという機会を与えてもらいました。これは本当に幸せな事です。もちろん迷いや不安もありました。恐怖や孤独感と闘いながら踊る毎日は本当に辛かった。正直言って、自分のバレエ人生の中でこれほど真剣に役に取り組んだのも、肉体的・精神的に追い詰められたのも初めてで、逃げてしまいたいと何度も思いました。でも今、舞台を終えて思うことは、全力投球したおかげでカラボスが自分にとってかけがえの無い存在になったという事。今回学んだたくさんの事、励まし続けてくれた先輩や仲間達、そして客席から頂いた拍手。私の大切な宝物です。
最後にこの場をお借りして・・幸江姉さん!本当に本当にありがとうございました。甘え癖はまだまだ治りそうもないですが、これからもよろしくお願いしますm(_ _)m。>

長い足と安定した技術で初めてとは思えない安定した踊りを見せてくれたと思います。由賀子、役作りって楽しいでしょ?これから、どんな役でもこだわって演じていって欲しいと思います。彼女が文章の中で「厳しく根気良く…」と書いてあったのは、リハーサルを見る度に私が「お芝居が一定のテンポで、どの部分に一番怒りが大きくて、どの部分が余裕の笑みなのかが、全然見えてこない」とか「全然怖くないよ、ただプンプン怒ってるだけに見える。1幕の雰囲気を壊さなきゃ!」とハッキリ言ったから。。。でもそれって自分が初演した時に思った事や言われた事だったな。辛辣な事も言ったけど、由賀子は不貞腐れたり落ち込んだりせず、常に前向きに取り組んでいた。そういう素直な子だからこそ、そこまで言えたんだけどね。由賀子、ガリガリに痩せちゃうほど良く頑張った!お疲れ様でした♪また一緒に同じ役をやる時も、お互いを刺激し合えるような仲間で居ようね?(^o^)

そうそうカラボスってバレエ団内では人気のある役みたい。(吉岡)美佳ちゃんが、全てのバレエの役の中で、最も踊ってみたいのがダントツでこのカラボスだと本人から聞きました。美佳ちゃんのカラボスね…どんなかしら?
メイクも楽しめるし、2幕の早着替えは大変だけど、音楽と一体になって暴れるのは気持ち良い!3幕で王子に向かって投げる“クモの糸”の小道具もなかなか面白いしね。

色んな意味でも、“カラボス”は私にとっても宝物だなと思います。