7月9日(火) 『白鳥の湖』本番当日 −3.4幕の巻−
3幕までの休憩時間は20分。頭飾りを付け替え、メイクを少しだけ変えて準備をしているとすぐにスタッフから「5分前です」のコールが。休憩時間って観ている側には長いけど、演じている側には短いものなんだよね…。
そして本番、大事な登場シーン。いきなりコケましたね…真っ暗な中でピンスポットを当てられていたんだけど、王子を誘いながらアラベスクして下手袖にハケる瞬間、「ココ何処?」って思うくらいに(思ったけど)袖がどこにあるか、みんながどこに居るか、そして…自分はどこに立っているのか全てが真っ白、いや真っ暗で見えなかった!!思わず袖に入りながら「キャー○△◇×?」って叫んじゃった。スタッフ達は何が起きたのか分からず、呆気に取られたり驚いたり…晴雄くんも「幸江さんどこ行くんだろ?」って思ったそうです。皆様、お騒がせしました。。。
楽しそうな(?)裏話だけど…。
実は…オディールの役については最後の最後まで悩んでいました。勢いに任せて強く踊ると、どうしても「カラボス」が顔を覗かせてしまう。踊ってて「あ!今のはオディールじゃないよ!!」って自分でも思うんだから…。それで少しにこやかに踊ろうと思ってやってみると司朗先生にも後輩にも「始めから勝ち誇ったように見える、もっと誘惑するように」って言われた。リハーサルのビデオを見ると、なるほどそう見える。強いと恐く見え、笑うと勝ち誇ったよに見える。私は誘惑しようと踊っているつもりなのに…思ったように表現できない日が続いた。
それに強いだけのオディールじゃ、騙された王子がおかしく見えてしまう。実際、『白鳥』の王子は判断能力に欠けるように言われる事もあるけど、私はそうじゃないと思ってた。待ち望んでいたオデットがやっと来てくれたと、少し興奮状態であったとは思うけどオデットと見るからに別人じゃ「騙された王子が愚かなんだよね」で終わってしまうよね?そこで考えたのが王子に対する時と王子が見ていない時と違いをつけてみようという事。2幕と違って3幕では各国から王子の誕生日を祝う人達が招かれているから、グラン・パ・ド・ドゥを踊っている時、王妃様は勿論の事、花嫁候補も私達を見ている。王子の前ではオデットを演じ、周りの人には素の姿もちらつかせてみようかなと。それに王子は気がつかない…それなら王子が愚か者には見えないでしょ?そこでパパ(ロットバルト)にも演技に参加してもらおうと、カズくんに協力をお願いした。カズくんは前日に王子を演じて疲れていたけど、快く私の申し出を引き受けてくれた。そう、本番当日にも演技を要求したんです。そうして自分のオディール像がはっきりしてきた、あとはもう舞台で思った事をそのまま表現してみるしか無かった。
3幕のグランはテクニックを重視しがち。私は特別テクニックに優れている訳ではないけれどテクニックに対しての恐怖心が無く、ピルエットやフェッテも沢山練習はしたけどいざ本番となると、そっちに気は取られなかった。
以前発表会で『ドン・キ』のグラン・パ・ド・ドゥを踊った時、初めて32回フェッテを回った。その時はすごく不安で左膝に水が溜まるほどフェッテばかり練習していた。ところが本番でいざ回り始めてみたら、回りながら楽しくなってきちゃった!32回転する必然性を感じたから、回りながら自然と笑顔になってしまった。バジルとの結婚式、元気なキトリなら「バジルに負けないわよ〜♪」といった風に回って見せるだろうと思えた。今回もオディールの強さや魅力を見せつける為には、当然フェッテが必要だから「これで王子を騙せた筈よ!」と笑顔になっていたと思う。(実はまだ自分の舞台のビデオを見ていません、見た感想はまた後日)
そして最後のシーン、晴雄王子は私(オディール)をオデットと思い込み信じきってくれていたので、最後に「本物はあそこよ!!」と言う時、ちょっと良心が痛んじゃった。オディールって実はカラボスより悪人だよ!って。これ、ホントの話しね(笑)
ちょっと脱線したけど、そういう訳でオディールには自分の役作りに、今ひとつ自信が持てなかった。終演後、楽屋口を出て初めに声を掛けてくれたファンの人には「オディールが強すぎた…」と感想を聞いたので「やっぱり駄目だったか…」と反省もした。私がオディールに悩むなんて、誰も思っていなかったよね。。。
終幕。
私はこの4幕が一番好き。音楽がドラマティックで聴いてるだけでジーンとしてしまう。オデットは王子を責める気持ちは無く、ただ王子の身が心配だった。ロットバルトは王子を騙しただけではなく、私から彼を奪う事を知っていたから。だから勝てるはず無いのに王子を守ろうと戦う二人の間に割って入るが、気を失って倒れてしまう。王子はオデットが死んでしまったと思い、怒りと悲しみが爆発してロットバルトの羽をもぎ取り、死に追いやる。。。目を覚ましたオデットは状況が把握出来なかった。王子がロットバルトに勝てるはずが無い、でももしかしたら!?と思った瞬間、後ろから王子に肩を抱かれてお互いの命を感じ合い、そして最後のポーズ♪ん〜良いシーンです。なのに、なのに。。。私の王子様は幕が閉まる瞬間に…カクッと動きましたね(笑)晴雄くんは「ごめ〜ん、やっちゃったよぉ〜」私は「あれじゃオデットがすごく重たいみたいじゃない!」と冗談を言って笑いました。幕が下りた後の第一声は「お疲れ様でした。ありがとう♪」と言いたかったのにな…(笑)
こうして私達にとって初めての『白鳥の湖』は終わったのです。
舞台裏では司朗先生が握手して下さいました。みんなもおめでとうと労ってくれた。楽屋に戻りながら、仲間達が握手を求めて来てくれたのは嬉しかった。
そして滅多に楽屋に来ない母が、私のバレエ学校時代(東京バレエ学校)や学生時代(香蘭女学校)の親友達を連れて来てくれて、とても暖かい言葉で迎えてくれました。
そして、帰り支度に相当時間がかかると思ったので、衣装だけ脱ぎメイクはしたまま楽屋口に出てみると、ファンの方々もそれぞれの言葉で舞台の感想を話して下さいました。中には帰り支度が終わるまで待っているからと、終演後1時間以上も待っててくれたファンの方達も。。。
緊張から硬くなって、自分の踊りが出来ないという悔しさが無く、晴れ晴れした気持ちで皆さんの言葉を聞けた事がとても幸せでした。
『白鳥』は観る方々それぞれに“理想”があるでしょう?公演が終わってから「オデットが良かった」「オディールが良かった」と正反対の感想があった事も興味深かったです。そしてHPを通じて皆さんの声が聞けたこと、皆さんに私の気持ちを伝える場所がある事にも喜びを感じています。(管理人さん、ありがとう♪)
応援し支えて下さった皆様、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。私は自分の為に踊っているのではなく、皆さんの心がストレスだらけの日常から開放され、バレエの世界に浸り、少しでも何かを感じて「観て良かった」と思ってもらえる舞台を作るヒトカケラになりたいと願っています。これからもリラックスして、集中して、どんな役でも精一杯演じていきたいと思います。
最後になりましたが、大きなチャンスを与えて下さった佐々木団長、とても時間を掛けて指導して下さった司朗先生、本当にありがとうございました。
下の写真は終演後、楽屋で写したオデット姫の衣装と、3幕4幕で履いていたトゥシューズです。お疲れ様でした.....ありがとう。

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